大阪府富田林市


大阪府富田林市 上下水道部 下水道管理課 主幹兼管理浄化槽係長 浅野和仁様

「課税漏れ、航空写真と家屋図で発見」。富田林市がGISを活用した独自の調査により、2007年10月、約500件もの倉庫・車庫などについて固定資産税が未課税となっていることが判明した。空間データの整備に対して試行錯誤を重ねながら、つねに新しい試みに挑み続ける同市は、全国のGIS関係者からも注目されている。


【プロフィール】

富田林市役所 庁舎

 

人口:122,317人(2008年7月末現在)
面積:39.66km2
所在地:〒584-8511 大阪府富田林市常盤町1番1号
TEL:0721-25-1000(代)
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大阪府の東南部に位置する富田林市は、自然と歴史に恵まれたまちである。市の北東平坦部は南北に流れる石川を挟んで平野が広がっており、古くは高野山(和歌山県)へ続く街道の宿場町として栄え、戦国末期より京都興正寺別院を中心とする寺内町として発展。現在も寺内町には室町時代の町並みが残されており、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。一方、市の南部は雄大な金剛・葛城連峰を背景に、緑豊かな丘陵と美しい田園風景が広がっている。1950年4月、人口約3万人で大阪府下16番目の市として誕生した同市は、都市化の進展とともに現在も成長を続けている。


導入の背景


富田林は、1995年から個別GISとして「道路管理システム」、「緊急通信指令システム」を導入。当時、基盤データには市販の住宅地図が使用されていたが、大縮尺で高精度な地図をベースにする上下水道管理システムの導入時、先の個別GISに使用されていた地図が法令に準拠した縮尺を満たしていなかった。しかし、地図の再調達には膨大なコストがかかるため、法令に準拠する地図を庁内共同で作成することに決定した。

このための話し合いが発端となって「GIS研究会」がスタート。上水道/下水道/道路/固定資産/文化財/都市計画など、地図を使用する部署から代表の職員が集まり、地図作成について話し合った。GIS研究会の活動はその後も継続して行なわれ、統合型GIS導入前には、現状把握と課題分析のためアンケート(2回)やヒアリングを実施。その調査結果から抽出した課題について協議が行なわれた。


【課題】

統合型GISの推進

 

既に稼動中の個別GISがあるため、システムの統合はできない。基盤データの統合を基本として、GISの統合化を推進する。

共有データの整備と更新


必要な地物を選定し、それぞれに要求する品質を決定し、ハイブリッド型の共有基盤を構築する。基盤に使用するデータは可能な限り既存データを利用し、かつ各部署に集まる地物更新に関するデータを統制集約し、効率的で随時的な更新を目指す。

推進体制の確立

 

庁内GISのバランスの取れた推進を目指すため、政策推進課が全体をコントロールする。

個人情報の取り扱い

 

GISでは、位置情報とリンクすることにより個人を特定するデータを多数扱うことになるので、その扱いについて充分な基準を設けて運営する必要がある。

GIS研究会では、皆がGISに関する一定の知識を持ち、互いに協議しながら進めていく状態を目指し、その後も様々な課題について協議を続けている。


【GISへの取り組みのあゆみ】

1995年

市販住宅地図をベースにした個別GIS「道路管理システム」、「緊急通信指令システム」を導入

1999年

「GIS研究会」がスタート
その後、地図に関わる部署の所属長で構成される「GIS委員会」が発足

2001年

「富田林市地域情報化計画」を策定
電子自治体化の一環としてGISに取り組むことを盛り込んだ計画

2002年

国土交通省のGISモデル実証実験「地域空間基盤データの共有化手法に関する調査」に参加し、既存の公共データや民間データを利用した空間基盤データを構築した。この実験は、自治体における空間基盤データを単に民間データを利用して構築するだけでなく、官民が共用できる「公共測量成果」とすることを目的としたものである。

2004年

富田林市統合型GIS整備基本計画」を策定
稼動中の個別GISに配慮しつつ、庁内で無駄なくGISを推進するためのしくみを検討し、共有空間データの整備方針やその更新について計画書としてまとめた。この基本計画の目的は、GISモデル実証実験での経験を踏まえた製品仕様書の導入、および市民サービスの向上である。

2005年

「富田林市共用空間データ」を構築
庁内のすべてのGISの基盤とすべく、精度区分の異なる様々な空間データからなるハイブリッドデータを、地理情報標準に準拠した公共測量成果として構築したものである。

2006年

e絵図@とんだばやし」が一般向けサービスを開始
「e絵図@とんだばやし」は、富田林市が所有するさまざまな地理空間情報をインターネット配信することで、市民生活に必要な情報を迅速に提供することを目的としたサービスである。(開発:クボタシステム開発株式会社

e絵図@とんだばやし


【GIS整備の基本理念】

多大なコストをかけることなくデータとシステムを整備する

 

→地理情報標準/製品仕様を導入

 

→共用空間データのすべてに「精度区分」を付加する

日常的に職員が運用できる仕組みを作る

 

→時間属性を活用する

 

→共用空間データのすべてに「発生時間」、「消滅時間」を付加する

市民も利用できる仕組みを作る

 

→市民が利用できるWebGISを導入

 

→空間データは積極的に市民に公開する


【富田林市の共有空間データの整備イメージ】
富田林市の共有空間データの整備イメージ


運用


【体制】
同市は、統合型GISを整備し日常的に運用するためには、庁内横断的な組織を構築し、管理運用体制を確立することが重要と考え、横断的な推進組織として「GIS研究会」を設置。地理情報を作成している部署を中心に研究活動に取り組んできた。「GISはシステムが基本ではなく、人と人とのつながりが基本である」との考えから、GIS研究会は、統合型GIS整備後も庁内の推進組織として活動を続けている。

現在、庁内共用のシステムはなく、基盤地図及びこれと整合したコンテンツの共有を図っている。地形データのうち道路は道路交通課が、家屋形状は課税課が、それらの統括管理と整合処理は政策推進課が担っている。また、従来課税課が実施していた航空写真撮影とオルソ作成は政策推進課が共用基盤として整備を担当し、課税課の他庁内各課に提供している。

【SISによる運用のメリット】
・ GIS機能のほとんどを網羅していること
・ 多数のデータフォーマットに対応していること
・ データの加工や編集機能が優れていること
・ 技術サポートの対応が良いこと
・ 汎用性、拡張性に優れていること

導入効果


GISを利用することにより、地図の検索作業にかかる時間や労力を短縮することができた。

業務で作成した地理情報を公開することにより、教育分野やコミュニティ活動での活用、周辺環境の把握等が可能になった。

計画情報や懸案箇所を参照できるため、問題点の早期発見、代替案の検討、データに基づいた計画支援が可能になった。

全庁的に基盤データを共有することにより、迅速な情報参照、情報誤伝達の防止、コミュニケーションの向上が可能になった。さらに各課で作成されるコンテンツの整合性維持と相互利用が可能となった。

地図化された分かりやすい行政情報を市民に迅速に配信することが可能になった。さらに、通報や問い合わせに対する対応の迅速化や正確性向上により、市民サービスの向上に役立っている。

 

市は2005年、上下水道や都市計画などの担当課が作っていた縮尺や表記がまちまちの地図を統合しようと、GISの開発に着手。パソコンの端末上で航空写真にすべての地図を自由に重ねることができるようになった。市税務推進室では、2006年から課税物件が記載された家屋図を重ねて調査。倉庫や車庫、増築したのに未登記となっている住宅など、家屋図に載っていなかったり、現状が課税内容と異なったりしている建物が約3000件見つかった。農作業機械の雨よけなど課税できない物件を除外し、課税対象は約500件にのぼった。(2007年10月 asahi.comの記事より)

 

今後の展望


航空写真から形成される高精度DSMと三次元オルソを活用し、GISの更なる活用と業務改善を図る。

空間データ(基盤地図)を職務の中で更新する仕組みを作る。

誰もがGISを操作し、空間情報を整備、編集できる環境を整える。

地図を使った管理、分析、資料整理を業務になじませ活用する。

それらを統括管理し、指導できる人材集団を育成する。

 

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